日本列島は2枚の陸のプレートに乗っています。北海道、東北から関東地方にかけての東北日本は北アメリカプレートの一部に乗っています。一方、太平洋側からは太平洋プレートとフィリピン海プレートという海洋プレートが日本列島に向かって押し寄せて来ています。これら4枚のプレートが境界を接する日本列島では、プレート運動による歪みエネルギーが時々刻々と蓄積されるため様々なタイプの大小の地震が多発し、世界有数の地震大国となっています。東北日本では陸側の北アメリカプレートの下に千島海溝と日本海溝に沿って太平洋側から太平洋プレートが沈み込んでいます。西南日本では、陸側のユーラシアプレートの下駿河トラフと南海トラフという海溝に沿って太平洋側からフィリピン海プレートが沈み込んでいます。
日本列島に大きな被害を及ぼす地震(図())にも様々なタイプがありますが、その中でも代表的な地震が海溝型地震と内陸直下地震です(図())。太平洋プレートやフィリピン海プレートという太平洋側から押し寄せてくる海底の岩盤からなる海洋プレートが海溝で沈み込むとき、陸側のプレートの端を一緒に巻き込みます。しばらく巻き込まれ続けたのち、やがて反発力によってプレート境界が急激に滑り陸地が跳ね上がります。この跳ね上がりによって起きるのが海溝型地震です。跳ね上がったときの地震動によって地上に被害を与えます。また、震源域が海底なので海底の岩盤が急激に隆起・沈降しその真上の海水が大きく持ち上げ(下げ)られたりして津波を引き起こします。海溝型地震は、年間数センチというプレートの動きを解消するため、数十年~150年程度の比較的短い間隔で繰り返し発生します。
一方、プレート運動によって海洋プレートが海溝の底に引きずり込まれると、陸側のプレートは圧縮歪みを受けます。その歪みが蓄積され限界に達すると内陸直下の断層が急激にずれ動き地震が起きます。このタイプが内陸直下の浅い地震です。このタイプの地震で規模の大きいものは断層のずれが縦ずれや横ずれの食い違いとなって地表に現れることがあります。内陸部では歪みの蓄積速度が海溝型地震の震源域であるプレート境界に比べて1桁ないし2桁も遅く、いわゆる活断層を含め内陸直下の地殻浅所で発生する地震の繰り返し間隔は数千~数万年と極めて長く、地震発生間隔が広がり地震発生時期の推定精度は著しく低下します。さらに、推定はデータが少ないため研究者により大きな開きがあるのが現状です。また、大地震を引き起こす断層の中には地下深くに潜んでいるものが多いため、十分な断層調査を行わないと、知られざる断層が突然ずれ動いて内陸直下で大地震を引き起こすことも十分ありえます。
海溝型地震では、繰り返し間隔が100年~200年という場合が多く、内陸直下の活断層の地震に比べて桁違いに短い。海溝型地震の発生間隔は人間の寿命と同じか数倍程度のものが多く、そのため海溝型地震については、数年以内に起きるかもしれないとか、30年以内に起きる確率が90%以上だといった推定ができる場合があります。そのため、活断層の地震と海溝型地震との区別をつけて防災対策を考えることが肝心です。
そこで、全国を見回して、
①今世紀の前半ないしは今世紀中に発生する可能性が高く、
②発生した場合は、国の存亡に関わる甚大な被害や人的・物的損失が生じる可能性がある地震を探り当て、必要な対策を事前に急いで実施することが重要な課題となります。
このような視点から、政府は地震防災対策の検討を行う対象地震を絞り込み、専門調査会を立ち上げて、最新の研究・観測成果や解析手法を取り入れつつ、詳細な調査・検討をおこなってきました。その結果が、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝沿いの6つの海溝型地震が検討対象地震として取り上げられました。