<出会い>
出会いが難しく、少し敷居が高いというイメージもありますが、地域の工務店と同様に、多数の設計事務所が存在します。設計事務所は建築の設計がメインですが、良心的な設計者であれば知識も豊富で、第3者的に様々な相談にのってくれます。アフターケアのことも考慮すると、工務店と同様に設計事務所もまずは地元から探すのが良いでしょう。情報源はインターネットや建築雑誌がメインになりますが、地域の建築士会や建築家協会などに問い合わせることもできます。設計者(建築家)は他の職種に比べて家づくりへの個々の思想や主張が強いため、この部分で住まい手とのミスマッチが起こると惨憺たる結果に終わります。まずはその設計者がどのような思想や主張で、実際にどのようなものを建てているのか、そしていかに共感できるものがあるか、をじっくり探すことからはじめましょう。
<基本設計>
住宅の概要設計や概算見積、土地の関連法規の精査などを行うことを、専門的には基本設計と呼びます。設計を得意とするので、法規や地理的に難しい案件の解決や住まいづくりに対する意識していなかった要望なども引き出してくれます。ハウスメーカーではこの部分をいわゆる営業設計として無償で行いますが、設計者は設計を主業務としているため、この営業設計を嫌います。基本設計を終えてやはり断るというケースも多くあり、その場合の業務報酬の支払いの有無については、最もトラブルが多い点であるため、基本設計を依頼する際は、業務内容などを事前にしっかりと確認することが必要です。
<実施設計>
設計の概要が決まった後、より詳細な設計を行うことを実施設計と呼びます。物件に理想的な構法の選択から、家具や本棚の配置、照明や外構など、建築物の全ての部分を図面化します。ハウスメーカーでは、このような自由度があまりないため、詳細な実施設計を必要としませんが、最も自由度の高い設計事務所ならではの仕事です。現在の住宅には、他と同様に様々な既製品を使用するため100%オーダーメイドとはなりませんが、自分ならではの住まいを最大限に設えてくれます。また実施設計図書は、建築費用や品質の明確化にもつながる大切なものです。ただ、設計事務所は生産のプロではないため、どうしても予算オーバーとなってしまう傾向は否めません。
<工事>
工事は別途施工業者が行います。自分のお気に入りの工務店でも良いですし、不安であれば、たいていお勧めの工務店を紹介してくれます。工事中は、第3者の立場で厳しく工事監理を行います。工事中は何かと問題も多いのが常で、工事車両の問題や工事現場のゴミ、騒音の問題など、文句が言い難い様な時でも、中立の設計者の存在は心強いです。
<アフターケア>
工事の不具合等の実際の修繕は基本的に工務店の仕事ですが、設計者は様々な問題の相談に乗ってくれます。設計者は第3者的な立場ですが、工務店とあまりにも仲が悪かったりすると、アフターケアがうまく出来ない場合も多く、現実的には設計者のお勧めの工務店に頼む方が良いかもしれません。
耐震偽装事件の記憶もまだ新しく、本来最も中立的な立場である設計者の社会的信頼が極度に失われ、設計業界全体の改革が急がれています。ほんの一部の人の問題であることも確かですが、設計者は自身の問題として、今後この信頼回復に努めるべきです。この点を見極めた上で、こだわりの家を建てたい、納得のいく住まいづくりがしたい、という人は設計者の門を叩くのがよいでしょう。