在来軸組工法住宅において、水平構面とは屋根や2、3階床等を示します。それに対して鉛直構面とは、壁(耐力壁)を示します。建物を地震や強風から守る上で、耐力壁が非常に重要であることは周知のことですが、この水平構面も建物の一体性を高めるという点で非常に重要です。
また、建築基準法において建物の構造上安全を確かめると前提のなかで、その確かめ方(構造計算法等)によって、この水平構面の位置づけが微妙に異なると言えます。木造住宅の構造上の安全を確かめる方法として、大きく分けるとすると、4号建物と言われている小規模で2階建て住宅程度とそれ以外で分かれると思います。
前者の小規模、かつ、2階建てレベルのものは、壁量計算と言われるいわゆる仕様規定によって、構造上の安全を確かめてよいことになっています。また、後者のそれ以外については、構造計算(許容応力度計算や限界耐力計算等)を行い、構造上の安全を確かめることとなっています。
この壁量計算(仕様規定)と構造計算の違いは、
壁量計算(仕様規定)・・・建築基準法に定める仕様で設計、施工されることにより構造上の安全性を確保するもの
構造計算・・・構造的理論に則り計算を行うことによって、構造上の安全性を確保するもの
と言えます。もう少しかみ砕くと、壁量計算は、決められた材料で、決められた量の耐力壁を、決められた仕様で、決められた場所に配置することと言えます。反対に、構造計算は、構造上安全である材料であれば好きなように使ってよいが、構造計算をしなくてはならないと言えます。
これを、水平構面に当てはめてみると、構造計算では当然、構造計算を行い、それに必要な水平構面の仕様を選択すればよいわけです。一方、壁量計算(仕様規定)の場合、当然、建築基準法の大前提である構造上安全でなければならないわけですが、その大前提のもとで、建築基準法施行令第46条(構造耐力上必要な軸組等)3項において、「床組及び小屋ばり組の隅角には火打材を使用し、小屋組には振れ止めを設けなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。」とあり、基本的には、水平構面には火打ちを入れればよいことになります。また、火打ちを入れない場合は、構造計算をして確かめてくださいということになります。
これが、前述の微妙な違いをうみます。構造計算を行う場合は、それに見合う水平構面の選択を行えばよいわけです。そして、壁量計算(仕様規定)では、火打ちを入れればよいことになります。ここまではよいですが、ここからが問題です。構造計算を行う場合は問題ないとして、壁量計算(仕様規定)の場合です。確かに仕様規定を守ればよいので、火打ちを入れればいいように思いますが、本当にそれだけでいいのでしょうか?
壁の量、配置、仕様については、「重い建物」と「軽い建物」、「2階建て」と「平屋建て」、壁の仕様についても、「土壁」、「構造用合板」、「石膏ボード」・・・・、そして、壁の配置もバランスよく設置しなさい(いわゆる「側端充足率計算」(平12建告1352号)と多くの取り決め、区別がなされています。しかし、水平構面については、火打ちの設置のみです。また、実情を見ると、構造用合板を使っている建物も多く見られます。では、どう判断したらよいのか?ということで、水平構面の役目、重要性を2階建ての壁量計算(仕様規定)において考えてみたいと思います。